投資詐欺に遭い、依頼した弁護士によって、詐欺師である投資家Kの財産調査が進められました。
その中で判明したのが、わずか2万円で購入されていた謎の土地でした。
その後も、投資家Kからの返金は一切なく、時間だけが過ぎていきました。
私は、最後の手段として財産開示請求に踏み切ることになります。
そして迎えた、投資家Kとの対面の日。
「とりあえず土地でも差し押さえたらいいよ」
そう投げやりに言い放ち、投資家Kは審問室を出ていきました。
――あの2万円の土地は、本当に差し押さえられるのか。
――それとも、最初から仕組まれていたものなのか。
私は、その違和感の正体を確かめるため、動き始めました。
■2万円の土地に残る違和感
私が投資を開始した直後、投資家Kが2万円で購入していた土地。
その事実が、ずっと頭から離れませんでした。
なぜ、あのタイミングで。
なぜ、そんな安い土地を。
違和感は消えないままでした。
弁護士が取得した土地の登記事項証明書には、売主の名前と住所が記載されていました。
私はその情報をもとに、自分でも調べてみました。
すると、売主は女性の会社経営者であることが分かり、会社名や電話番号も確認できました。
私はすぐに、その情報をS社長に伝えました。
■見えてきた土地購入の真相
「ほんなら、その人に俺から電話して、Kに土地売った経緯とか聞きますわ」
S社長はそう言い、すぐに動きました。
しばらくして、S社長から電話がありました。
「全部聞いたで。Kとはゴルフで知り合ったらしいわ。
分筆もできへん、売れない土地があるって話したら、2万円で売ってくれ言われたらしいわ。
司法書士にも“売る価値ない土地”って言われてたみたいやで。
しかし、よう私の連絡先わかりましたね、って驚いてはりましたわ」
その話を聞いたとき、私は妙に納得してしまいました。
点と点が、つながった気がしたのです。
■偶然ではないと気づいた瞬間
私が投資に参加した直後に、Kが購入した“価値のない土地”。
これは偶然なのか――。
私は、そうは思えませんでした。
むしろ、こう考える方が自然でした。
将来、私が訴訟を起こし、強制執行をかけてくる可能性を見越して
あえて差し押さえ用の“価値のない財産”を準備していたのではないか
2万円という、奪われても痛くもかゆくもない金額。
それを“財産があるように見せるための材料”として用意していたのではないか。
そう考えると、すべての辻褄が合いました。
このとき私は、はっきりと感じました。
投資家Kは、相当手慣れた詐欺師だ
偶然ではない。
あまりにも用意周到すぎる。
何人も騙してきたのではないか――
そんな疑念が、現実味を帯びてきました。
S社長も以前からこう言っていました。
「Kは長年、こういうことやって生きてきた奴や思いますわ。経験上、分かるんです」
■新たに見えてきた“差し押さえ先”
さらに、投資家Kが関わっているという内縁の妻の店舗についても動きがありました。
S社長は言いました。
「謄本取ったら分かるで。Kが経営しとる可能性ある」
実際に登記を取得すると――
そこには、投資家Kの名前が“取締役”として記載されていました。
「な、経営者やろ?取締役やったら報酬ない可能性もあるけどな。
この店、差し押さえできますわ」
私は思わず聞きました。
「え…店って差し押さえできるんですか?」
「できるで。Kが関わっとる以上、対象になる可能性ある」
一気に現実が動き始めた感覚がありました。
■自宅特定への執念
しかし、最大の問題は“住所”でした。
「Kの免許証の住所、誰も住んでないダミーやろ?
あそこでは強制執行できへん。実際に住んでる場所を特定せなあかん」
私はこれまで、内縁の妻について調べていました。
旧店舗は自宅兼店舗。
現在も同じ場所に住んでいる可能性がありました。
しかも、その場所はKの免許証の住所である空き家の近く。
――ということは、Kもこの周辺にいるのではないか。
そう思った瞬間、あることを思い出しました。
■名刺がつないだ決定的証拠
以前、知人をKに紹介したことがありました。
もしかして――
私は知人に連絡しました。
事情を説明すると、
「名刺あるよ」と言われ、写真を送ってもらいました。
そこには、Kの顔写真と住所が記載されていました。
その瞬間――
私は、ある言葉を思い出しました。
「詐欺師は必ずどこかに隙を残している」
S社長が言っていた言葉です。
これまで何も掴めなかったのに、
最後に残っていたのは――
たった一枚の名刺でした。
完璧に見えた相手にも、
必ずどこかに“ほころび”がある。
それが、ようやく目の前に現れた気がしました。
私はすぐにS社長に伝えました。
しかし――
「それだけじゃ、住んでる証拠にはならんな」
そう言われました。
■自分の足で掴んだ証拠
私は、実際にその住所を確かめに行くことを決めました。
遠方だったため、早朝から出発しました。
その場所は、コンビニすらない新興住宅街。
同じような家が並び、探すのは簡単ではありませんでした。
それでも、必死に歩き回り――
ついに見つけました。
投資家Kの名前が書かれた表札のある家を
私は震える手で、表札と外観の写真を撮りました。
すぐにS社長に電話しました。
「見つけたんです。Kの家」
すると、笑いながらこう言われました。
「探しに行ったんですか。ようやりましたね」
その言葉で、少しだけ報われた気がしました。
■次に待っていた“現実の壁”
これで、自宅の証明に近づいた。
そう思ったのも束の間、
次に待っていたのは、別の壁でした。
「強制執行の書類、自分で書いてもらわなあきませんで」
債務名義、送達証明書、執行文――
聞いたこともない言葉ばかりでした。
私は一気に不安になりました。
正直、何も分からない。
パニックになりながら、私はS社長にお願いしました。
「お願いです。裁判所まで一緒に来てもらえませんか」
「うーん…忙しいねんけどなぁ。まあええですよ」
そう言ってもらえたとき、少しだけ安心しました。
■それでも前に進むしかない
裁判所での手続きという新たな壁。
正直、怖かった。
でも――
ここを越えなければ、何も変わらない。
私は覚悟を決めました。
そして、S社長とともに、
裁判所へ向かうことにしました。
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